【2002 アリゾナ・スプリングキャンプ・ インターンシップレポート】

滝口 昌則

3月2日、アリゾナ州のフェニックス空港からタクシーで約40分程走り、ピオリアにあるシアトルマリナーズのクラブハウスに到着しました。その日はメイン球場でオープン戦が行われていた為,メジャーリーグのトレーナーの方々はトレーニングルームにはいませんでした。この日は指定されたホテルに移動し、明日に備え休息を取ることにしました。

翌朝、予定の7時30分よりも少し早めにマリナースのクラブハウスに行き,この研修のアメリカサイトの責任者であるリックグリフィン氏と会い、スタッフの紹介、施設の説明、及び研修の内容の説明などを簡単に受けました。朝の治療は7時半から始まり,練習開始直前の9時半前まで行われます。メニューは個々の選手によって異なりますが,主に超音波,または超音波とエレクトリカルスティムレーションのコンビネーションを用いた後に、局部マッサージ,ストレッチといった流れで治療が行われていました。また、ヘッドトレーナーであるグリフィン氏の指導の下で、選手の必要性に応じて、PNFや筋力トレーニングも適切に行われていました。また、マリナースの医療スタッフの特徴として、佐々木投手の専属トレーナーである江川氏が鍼灸・マッサージ師として大きくチームに貢献しているように思えました。実際,江川氏のマッサージを必要としている選手達がたくさんいるのにも驚かされました。また、キネシオテープが治療法のひとつとして,痛みを緩和するのに実に効率良く、選手の間に幅広く使われていました。

通常,9時半から試合前の練習が始まります。野手組と投手組に分かれ,それぞれ軽いキャッチボールから始まり、その後,野手組はフリーバッティング、投手組はフィールディングの練習または投球練習へと移動します。トレーナーはグランドで怪我が起こらない様に、常に選手の動きに注意していなければなりません。また,選手とのコミュニケーションも非常に大切で、気が付いた事などは,すべてノートに書き留めるようにしました。選手達は約2時間程の練習を終えると、午後からの試合に向けクラブハウスで昼食を取ります。その間もトレーナーは、午後の試合に出る選手の治療を休む間もなくこなしていかなければいけません。

オープン戦は通常1時から始まりました。試合中はひとりのトレーナーがベンチに入り,もう一人がトレーニングルームに残って,5回の裏で引き上げてくる主力組の選手の治療やゲガをしている選手のリハビリテーションなどを担当します。試合後にも引き続き、アイシング、マッサージなどを中心とした選手への治療が行われます。夕方5時半過ぎ, 翌日に備え、水、サプリメント, テープなどの補充を終え, トリートメントテーブルをきれいにしてトレーナーの一日が終わります。

3月9日から15日までは、サンディエゴパドレスで研修を受けました。ヘッドトレーナーのトッドハッチソン氏も快く我々を迎え入れてくれました。パドレスの朝の治療はマリナースよりも30分早く開始されます。主に赤外線, 超音波を用いた後に、ソフトもしくはディープティシューマッサージ,PNFを用いたストレッチといった流れで治療が行われていました。また、週末にはカイロプラクティックの資格を持ったドクターが来て, 主に脊柱の矯正を望む選手を治療したり、専属のドクターがカウンセリングのような形をとって選手とコミュニケーションをとっていたのに感心しました。またこの期間中に, 幸いにもPNFの第一人者であるボブムーア氏から短い時間ではありましたが講義を受けることが出来ました。

3月16日から23日まで, 都合により再びマリナースで研修を受ける事になりました。3月18日には完全休養日があり、マリナースの選手や他のトレーナー達は趣味のゴルフなどをして、各々オフを満喫したそうです。私は研修の期間も限られていた事もあり, オフを返上してマイナーリーグでの一日現場実習を体験させて頂きました。この経験は私にとって貴重なものとなり, またビッグリーグと呼ばれるメジャーリーグとマイナーリーグの差を、実際目で見て確認出来たのも大きな収穫のうちのひとつでした。この3週間で得た経験は、何事にも代えられない貴重なものとなり, 近い将来日本のスポーツ界に、何らかの形で貢献したいと考えるようになりました。

最後に,この素晴らしい機会を下さったJBATSの川島代表, 及びJBATSの関係者の方々には、心からお礼を申し上げたいと思います。本当に有難うございました。




大澤 省吾

2002年3月2日、アリゾナ州ペオリアに到着。翌日から、実習第1球団であるシアトル・マリナーズのキャンプ地にのり込みました。

マリナーズでは、早朝7半から練習前のケアが開始されます。練習開始直前までのおよそ2時間の間に、超音波治療や電気療法が選手に施されていました。トレーニング・ルームに隣接した部屋にある大き目のワールプールは「少しぬるいお風呂」といったイメージでしょうか、練習前に好んで20分ほど浸かる選手が何人か見受けられ、広く活用されているようでした。比較的日本人選手の多いマリナーズの特徴かとも思われましたがマッサージも治療の一環として行われおり、日本人選手だけでなく局部マッサージを受ける現地の選手もたくさんいました。この事からマリナーズでは東洋医学療法が自然に受け入れられている事が感じられました。他に、トレーナーからストレッチを受ける選手、テーピングを巻いてもらう選手、PNFを受ける選手、インナートレーニングだけでなく、アウタートレーニングの指導を受ける選手もみられ、数少ないトレーナーたちは早朝からとても忙しくしていました。

練習はポジションごとに分かれて行われます。トレーナーも分散し各ポジションのバッティング場、ブルペン室内練習場などの定位置につき選手達の動きに細心の注意を払っていました。そして互いの状況を無線でチェックし、何か起こったときにすばやく対応できるように欠かさずコミュニケーションをとっていました。練習はお昼前には終了しますが、トレーナーには昼食をとる暇もありません。練習後のアイシングだけでなく登板ピッチャーに超音波治療をそしてストレッチを行い、故障選手もお昼の空き時間を利用してトレーナーのケアを受けに来ます。昼のケアが終わると試合の準備に取りかかります。トレーナーは全員がベンチに入るわけではありません。一人だけベンチに入りその場で起こる外傷に対応します。また、暑い夏だと気温は40℃近くまで上昇し脱水症状を起こす選手もいるので、彼らに水分補給を促すのもベンチにいるトレーナーの務めです。そのほかのトレーナーは常にトレーニング・ルームに待機し、試合に出場していない選手のケアを行い、その合間に試合後にケアを必要とする選手達に備えていました。 試合後は主にアイシングが行われていました。すでにご存知の方もいるとは思われますが、メジャーリーグではビニル袋に氷を入れるわけではなく、クラッシュした氷を直接タオルに巻きます。その『アイスタオル』を患部に当てバンテージで固定します。各選手に時間が設定されたタイマー(クッキングタイマーのようなもの)を渡し各自が責任を持ってトレーニングルームに戻って来れるような仕組みになっていました。また全身マッサージを受ける選手も多く見られました。

3週間目に入り、マリナーズからサンディエイゴ・パドレスのキャンプ地へ移動しました。パドレスの球場はマリナーズと隣り合わせになっていて「移動」とは言ってもそうおおげさなものではありません。しかし、治療内容には大きな違いがありました。パドレスでも超音波治療、電気療法、マッサージが主に行われていましたが、それ以外にPNFが重視されており、またレーザー治療やカイロプラクティックも頻繁に行われていました。練習中や試合中のトレーナーの行動は同じものでした。

どちらも球団にも共通していた事は週に2回ほどトレーナー・ミーティングを行っていた事です。治療内容を確認しあったり、ケアがスムーズに行われているかどうかなどを確認しあったり・・・新しい治療方法は積極的に取り入れ常にアスレティック・トレーニングの向上を心がけていた彼らの姿に感動を覚えました。

長いようで短かった24日間。私にとってこれまでにない充実したかけがえのないものとなりました。最後になりましたが、このような機会を下さったJBATSと協賛してくださったキネシオ株式会社の皆様、マリナーズとパドレスのアスレティック・トレーナーの方々に心から感謝の意を表します。ありがとうございました。